2年程前にソニーがCES2020でセダン型高級BEVのコンセプトカー「VISION-S」を発表した時に、「え?ソニーが車?」と思った方も少なくないと思います。
当時のソニーは、「新時代のモビリティを考えるためのスタディであり、市販する予定はない」と言っていました。
私も正直第1報は驚きましたが、昔株主でしたので、「なるほどソニーならやるかもしれないな」と、その心意気に嬉しくなりました。
ホンダも7人乗りの小型ビジネスジェット機「HondaJet」の売り上げが2017年には納入数が世界1位になるなど、新たな産業分野での成功を収めている、挑戦し続ける会社です。
今回そんなソニーとホンダが事業提携し、両社の持つ強み同士を活かせる合弁会社を設立し、高付加価値のEV(電気自動車)を共同開発・販売していくことを発表しました。
音楽好き、車好きの筆者としてはこの異業種の両社のタッグは大いに気になるとこなので、今回は両社の事業提携とはどんなものなのか、両社の共通点などについて調べてみたいと思います。
・ソニーとホンダの共通点とは
・ソニーとホンダの強みとは
ソニーとホンダの事業提携とは
ソニーグループと本田技研工業とは、3月4日にソニー本社において、「モビリティ分野における戦略的提携」に向けて基本合意したと発表しました。
ソニーグループ 代表執行役会長兼社長CEOの吉田憲一郎氏と、本田技研工業取締役 代表執行役社長の三部敏宏氏が今年2022年中に設立予定の新会社についての説明と、それぞれの会社の歴史を踏まえた現在の技術を今後お互いにどのように活かして融合させて行きたいか、お話されました。
簡単に言うと、目に見える事業として”高付加価値のEV(電気自動車)を共同開発・販売”、つまりソニーの技術を集結して作った車「VISION-S」と、本田の車における今までのノウハウを合体させた、世界一のレベルの電気自動車を共同開発してい行き、その中にモビリティ向けサービスの提供も盛り込んで行くということのようです。
ソニーとホンダの共通点とは
ソニーとホンダの共通点とはなんでしょうか。
一言では言い尽くせませんが、それは「同じ志を持つ仲間」がいたことではないでしょうか。
ソニーの創始者である井深大(いぶかひろし)氏は、森田昭夫(もりたあきお)氏と出会い、同じ志を胸に1946年にソニーの前身である東京通信工業(東通工)を創立しました。
戦時中にレーダーの研究開発に従事していた当時23歳の盛田氏は、海軍の新型レーダーの開発グループで当時35歳の井深氏と出会いました。
12歳の年の差を超えて、2人は技術に対する熱い思いで、戦後にどんなことがしたいか、その先のことを考えていたと言います。
その後、2人でトランジスタ技術を学びに渡米したり、経営難の時には盛田氏の実家からの金銭的援助や応援を受けて、10年という企業の成長としては短い月日でソニーという大企業の誕生となりました。
同じ1946年に本田宗一郎(ほんだそういちろう)氏も本田技研工業を創立しましたが、3年後に日本経営史上「最高の大番頭」と言われる藤澤武夫(ふじさわたけお)氏と出会うことにより、本田の飛躍が始まりました。
ホンダでは、主に技術担当の本田宗一郎氏が開発・研究を、営業・経営面を藤澤武夫氏が受け持ち、上手く軌道に乗せたと言います。
実は本田宗一郎氏と井深大氏・森田昭夫氏は個人的に交流があり、特に本田宗一郎氏と井深大氏は2歳違いの親友で、お互いにそれぞれの分野で世界を目指し、経営陣を悩ませる程の(投資的に)技術革新を行い、牽引し続けました。
それほどの賭けのような投資をしてでも、「やり遂げたい強い思い」を貫き通し、そして結果を出し続けた、これも両社の共通点でしょう。
井深大と本田宗一郎という天才エンジニアを育て、支えていたパートナー、森田昭夫、藤澤武夫という良き理解者がいたことで、ソニーとホンダが世界的企業に成長出来たのだと思います。
そしてその意志を理解し共感する社員たちが集まって出来ている会社だからこそ、現在も世界のトップ企業でい続けられるゆえんですね。
ソニーの強み
ソニーが元々VISION-S(ビジョン エス)という電気自動車を開発して来たのには、最初から電気自動車を作って販売を考えるというよりは、当社の持つセンサー系の技術やAV技術等を採算度外視してふんだんに盛り込み、ソニーに出来る事、どちらかと言うと「車の内部における技術力」=今後のEV車においてどいういう事が出来るのかの可能性を試していたように思います。
イメージセンサーやセンシング技術を搭載し、自動運転に対応。(※レベル2相当)
そしてソニーお得意のオーディオ技術(スピーカー・音質)、エンタテインメント(音楽やメール、ナビゲーションシステムやお天気を始めとする情報等)の技術も盛り込まれ、車内が自分にとって”居心地の良い部屋”と同じに感じる空間になるのではないでしょうか。
ソニーの強みは何と言っても遊び心の延長にある確かな技術力ですよね。
開発者達が、自分だったらこういう機能があるといいなと思えるものを実験的にやって行き、採取的にはそれが顧客が望むものになるパターン。
例えば、最近では犬型ロボットの「アイボ」等が良い例ではないでしょうか。
1匹20万円前後と、一般人にはやや高いと思える額なのかもしれませんが、そのAI技術により、自分でエネルギーチャージしたり、会話を蓄積してその先につなげて充分会話が成り立つ技術、またロボットの目を通して家の防犯に役立てたりカワイイだけではない技術力、圧巻ですよね。
自由闊達な社訓の通り、”会社の包容力の大きさ”が”限界のない想像力”を育てている気がします。
では、そのソニーの初の車「VISION-S」のプロモーション動画をどうぞ。
BGMが流れていてエンジン音は全く聞こえませんが、もの凄くスムーズに走っているように見えますね。
この車の大きな特徴の1つがサイドミラーがないこと。
車の両サイドにあるのはセンサーで、ここからの画像を車内のルームミラーにて確認することが出来ます。
また、運転者・助手席前のパネルの大きさが車幅とほぼ同じで、3画面に分かれており、助手席の人が運転者に変わってナビゲーションシステムやオーディオ等を操作・画面の入れ替え等がしやすくなっています。
※自動運転の「レベル2」とは
自動運転のレベルは現在0~5までの6段階が定められており、「レベル0」は、今私達多くの一般人が乗っている、人間が運転するレベルで、「レベル5」は、完全自動化で人間の手を使わずシステム主導で走行領域を限定なしで走れる状態を言います。
「レベル2」とは、”部分運転自動化”の状態で、あくまで人間が主導、限定的な道路での走行が可能なレベルです。
ですので、ソニーの車としての自動運転のレベルはまだまだのようです。
ホンダの強み
ホンダの強みは、なんといってもその多角的な事業展開でしょう。
冒頭で述べたように、バイクや車のホンダが、小型ジェット機まで開発・販売をしているのですから。
またホンダの二足歩行のロボット「ASIMO」(アシモ)は、2000年に初登場してから、今年で丁度20周年を迎えました。
ソニーの犬型ロボットアイボも、ソフトバンクのペッパーも可愛いですけど、こうして二足歩行で一番人間に近い、ヒューマンロボットは日本ではやはりアシモが最先端ですよね。
そして約20年もかけて形にされた「ホンダジェット」も最先端技術の結集。
一機5億8000万円くらいと、一般人には一生かかっても手が出せない金額ですが、プライヴェート・ジェットにしたらこの性能では破格の値段だそうです。
実際に2017年以降「ホンダジェット」の2020年の納入数が31機と、小型ビジネスジェット機クラスで4年連続の世界首位キープとなっています。
動画を見るとその性能の良さが良くわかりますが、「クラス最長航続距離・クラス最高燃費性能・クラス最高上昇率」と、3拍子揃った高性能小型ジェットなのですね。
ホンダは幅広い分野での事業参入・開発、その技術力が何といっても魅力であり、強みだと思います。
まとめ
ソニーとホンダのEV車への事業提携の内容と、両社の共通点・強み等を見てきました。
両社の経験・知識、高い技術力に加え、会社としての志に賛同する多くの人々に寄って支えられている世界的企業であることが共通点であり、また強みでもありました。
ホンダは2021年4月に、2040年に新車のすべてを走行時に二酸化炭素(CO2)の出ないEVと燃料電池車(FCV)にすると発表しています。
そうした中、ソニーのセンサーやオーディオ技術と組んで、走行時の安全性・モビリティの進化(音楽や映画等のコンテンツ配信等)を手にしたEV車が世界を席巻してゆくことは間違いないだろうと、今後の期待が膨らみます。
両社のコラボレーションで設立された新会社の今後の動向に目が離せないですね。
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