去年に引き続き2回目となる、古海行子さんのピアノリサイタルに行ってきました!
会場も去年と同じく「浜離宮朝日ホール」です。
あの、こじんまりとした縦長の、ちょっと教会に似ている作り・雰囲気、そして音響の良さなどが気に行って、今回も同じリサイタルを選びました。
今年は昨年のプログラムとは全く違う選曲。
そのあたりもまた、楽しみの1つでもありました。
やはり、生演奏に勝るものはないですね。。
今年のリサイタルの様子をシェアしたいと思います。
・古海行子(ふるみやすこ)ピアノリサイタルアンコール曲について
・古海行子(ふるみやすこ)ピアノリサイタルの古海さんのご挨拶
古海行子(ふるみやすこ)ピアノリサイタルのプログラムと感想
演奏曲目
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン:ピアノソナタ第30番 ホ長調 Op.109
Beethoven, Ludwig van:Sonate für Klavier Nr.30 E-Dur Op.109
第1楽章 Vivace, ma non troppo
第2楽章 Prestissimo
第3楽章 Andante molto cantabile ed espressivo
フレデリック・ショパン:《アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ》Op.22
Chopin, Frederic-Francois :Andante Spianato and Grand Polonaise Brillante in E-flat Op.22
-intermission-
クロード・ドビッシュー:《ベルガマスク組曲》
Claude Achille Debussy :Suite bergamasque
Ⅰ「前奏曲」 Prélude
Ⅱ「メヌエット」 Menuet
Ⅲ「月の光」 Clair de Lune
Ⅳ「パスピエ」 Passepied
セルゲイ・ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 Op.36 (1931年版)
Rakhmaninov, Sergei Vasil’evich:Sonata for Piano No.2 b-moll Op.36
第1楽章 Allegro agitato -Meno mosso
第2楽章 Non allegro. Lento – Piu mosso
第3楽章 Allegro molto – Poco meno mosso – Presto
今回のプログラムは、古海行子(ふるみやすこ)さんが演奏後にお話しして下さいましたが、国も時代も背景も違う4者4様の、とてもバラエティーに富んだ豪勢な音楽家の曲で構成されていました。
ピアノは今回もスタンウェイで、休憩中に調律師さんが、前回と同じくそれはそれは丁寧に何度も何度も細かく調整されていました。
時間になると、古海行子(ふるみやすこ)さんがステージ左側からやって来てお辞儀をされました。
今回の衣装は、落ち着いたワインレッド色のノースリーブのドレスで、1年ぶりに会う彼女は、たくさんのことを吸収して、また1周り中身が濃く大きくなっているように感じました。
決して以前が軽かった訳ではないけれど、何か重さが増し、揺るぎない安心感のようなものも感じました。
古海行子(ふるみやすこ)さんが椅子に座って準備を始めると、ふっと照明が落ちてその世界に入って行かれました。
まずはヴェートーヴェン。
身体が左に傾いたと思ったら、やはり優しい音色で演奏が始まりました。
低音の響きが、まるでパイプオルガンのベースのように聞こえて、正面にないはずのパイプが見えそうになりました。笑
第2楽章に切り替わった時の、勢いにハッとさせられました。
やはり、力強さが増していて、優しい味の暖かいシチューを食べていたら、いきなりパンチの効いた味付けがされているお肉に当たったような感じです。
この1年の成長が凄まじかったのだなと思わされる演奏ーヴェートーヴェンでした。
そして次は、私も大好きなショパン。
若い頃の溌剌とした感じ、夏の光のような煌めき・眩しさを感じる演奏で、華麗なる大ポロネーズは、古海さん自身が太陽の光に顔を向けて目を瞑っているみたいに見えました。
休憩を終えて再び舞台へ戻って来た古海さんは、今度はブルーのドレス姿でした。
ドビュッシーの曲も、特に(ベタですが)「月の光」が大好き。
第1章からは、全体的に優しさ・柔らかさがとても感じられ、その中にも1粒1粒音の強さがわかりました。
第2章からは、力強さと反発するようなしなりのようなものを感じました。
スタッカートのある軽快な旋律にバネのようなしっかりした跳ねを感じました。
第3章はもう、上から降り注ぐ柔らかなライトが月の光に思えた程、切ないけれど優しく柔らかい音で包まれて、重力を感じないようなフワフワとした、とても幸せな気分になりました。
そして恩田陸さん原作「蜜蜂と遠雷」の主人公、栄伝亜夜(えいでんあや)と無名の天才風間塵(かざまじん)が満月の夜に月を見ながら演奏するシーンを想い出しました。
あの時の2人が、コンクールの練習も何もかも忘れて、ただ音を楽しんでいたシーンです。
正直、古海行子(ふるみやすこ)さんのこの演奏を聴きながら眠りにつけたらどんなに幸せだろうと思いました。
もし、CD化されたら寝る前に流す音楽=「睡眠へのいざない」にすると思います。笑
第4章は、ずっと続く単調な同じリズムに「正確さ・端正さ」を感じました。
スタッカートの跳ね方や、3連符のところをややゆっくり弾くなど、そのピアニストによって大分その感じ・雰囲気が変わるんですよね。
中には、ゆっくりべたーっと弾いて、軽やかさがなくなってしまう感じの弾き方をする方もいますが、私はあくまでも軽い方が好きです。
そして最後はラフマニノフ。
スーっと大きく息を吸いこんで、これからまるで深く海の底にでも潜るかのような勢いで弾き始めたピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 Op.36。
勢いで左足が上がったりと、古海さんにしてはかなり激しく弾いていたのだと思います。
それでも、他の演奏者に比べたら優しく感じてしまう…。何故でしょう?
とにかく今回のラフマニノフは、私の知る古海行子(ふるみやすこ)史上、一番激しい・迫力ある演奏だったことは間違いないです。
演奏が終わって、割れんばかりの拍手の中、一旦舞台袖に下がってからステージに戻ってからのご挨拶、暫くは息が上がっていました。
そんなにも曲を弾くことに、何もかもを込めて集中しているんですね…。
前回もそうでしたが、このホールではマイクが高性能なのか、音の反響が良すぎるからなのか、弾いているご本人の息遣いが右側から良く聴こえるんですよね。
それで、一緒になって息を吸い込んで準備してしまうというか、緊張感が高まります。
その息遣いを聴いていると、まるで古海さんと一緒に演奏しているかのような気分になってしまいます。
そして、1曲終わるとは~っと深く深呼吸して一緒に演奏を終えたという気分になり、こちらの世界に戻ってくるようなそんな感覚。
1年前に書いた、私がイメージする古海さんの演奏は”哀愁をたたえた優美さ”でした。
カラッと明るいモーツァルトより、儚げがつきまとうショパンの方が似合う、そんな演奏。
明るい曲の演奏より、儚げな曲の演奏の方が向いているという感想は変わりませんが、それでも、古海さんがこの1年で吸収したであろうたくさんの新しい感情や経験が、彼女自身をより濃く、且つより明るく…こう、何か内側から滲み出て来る明るさのようなものがあるような気がしました。
古海行子(ふるみやすこ)ピアノリサイタルアンコール曲について
今回のアンコール曲は、ヨハン・シュトラウスの「明日!」でした。
(R. Strauss / Reger – “Morgen!” Op.27-4)
これまた、とても優美でロマンチックな曲ですよね。
こんなにゆっくりで、消え入りそうな優しい音で奏でる明日。
歌詞も素晴らしい愛の詩で、切ない音色にロマンチックな2人の明日が見えてくるような気がしますね。
主題の歌詞が出て来るまでに、長い長い前奏とも取れるピアノ部分が流れると、それだけでもう涙が出そうになってきます。
丁寧で優しく切ない優美な音を奏でる、古海行子(ふるみやすこ)さんにぴったりの曲だと思いました。
古海行子(ふるみやすこ)ピアノリサイタルの古海さんのご挨拶
全プログラムが終了すると、たくさんの拍手の中、一旦ステージを去ってまた私達の前に戻ってこられた古海行子(ふるみやすこ)さんが、ご挨拶して下さいました。
昨年のリサイタルではコ□ナで、ご挨拶の予定はなかったけれど…と前置きして、お話して下さったのですが、直接お話して下さるお気持ちになったということがとても嬉しかったのを覚えています。
今回のこの選曲に対して、普通は「あの曲を弾いて下さい」とか、「誰々の曲を弾いて下さい」とか、そいうお願いをされるものだけれど、主宰者であるコロンビアさんの太っ腹なご厚意で、自分の自由な選択で(ちょっと言葉は違いますが)決めた曲ばかりとのことでした。
4人それぞれの大音楽家達への思いや、取り組んだ時間もまちまちでしょうし、ある年齢にならないと弾けないという、取り掛かりにくい曲や重い曲などもあるはずです。
まさに、今の古海行子(ふるみやすこ)さんだからこそ出来る演奏やその感覚、現時点、その地点でしか出せない音色を聴かせてくれたのだと思いました。
今後もその瞬間・瞬間を見逃さないで聴きに行きたいものです。
さらに嬉しいことに、今回はサイン会がありました!
私は昨年のリサイタルで、CDを購入した際に最初から書かれたサインを頂きましたが、今回はサイン会ということで、直接書いて頂けるとのことなので、また同じCDをその場で購入してサインしてもらいました。
ほんの少しの間ですが、間近でお顔を拝見しながらお話させて頂いたあの瞬間は夢のようでうっとりしました。
今、私の手元には2枚同じCD『シューマン:ピアノ・ソナタ第3番』がありますが、おかげ様でサイン入りCDは、私の家宝となりました🎵
まとめ
こんなご時世で、「ブラヴォー!」との掛け声もなく、シーンとした中での演奏、さすがにもう慣れている…のかもしれませんが、客席からの反応が分からずとてもやりにくいだろうなぁとは思いました。
客席の1列目は全て空席だったので、対策として空けてあったのでしょうね。
2列目にいた紳士が、「ブラヴォー!」と書かれたタオルを何度か上げていました。
今回のリサイタルは、来ていた客相からか、あまり積極的なお客様ではなかったと思われます。
普通は1曲ごとに拍手を入れるのですが、誰もそれをせず、大人しかったです。
大学院をご卒業されて、また1つ上のステージに立たれた古海行子(ふるみやすこ)さん。
今後はプロのピアニストとして、ますます腕を磨かれていろんな曲やジャンルに挑戦されてゆくことと思います。
これからも応援していますし、今後のご活躍を楽しみにしていますので、是非ともまた素敵な演奏を聴かせて欲しいです。
コメント